へろんです。
九州ツアーの最後、小倉駅から新幹線に乗るまでに少々自由時間があったため、小倉駅からすぐに行けるところとして、
北九州市漫画ミュージアムに行くことにしました。

小倉駅からすぐ目と鼻の先、
「あるあるCity」という商業施設の5、6階にあります。
なぜこの小倉に漫画ミュージアムか、というと「松本零士氏、わたせせいぞう氏、畑中純氏、北条司氏など北九州ゆかりの著名な漫画家が数多く誕生」していることにちなんでいるようです。この中でSFファンとしてよく存じているのは「宇宙戦艦ヤマト」や「銀河鉄道999」の松本零士氏ぐらいなのですが、松本零士氏は福岡県久留米市のお生まれだそうです。

常設展入り口には、撮影可の海賊戦艦《アルカディア》をバックにしたハーロックが。
「宇宙海賊キャプテンハーロック」は1977~1979年に連載された漫画の単行本を持ってましたが、マゾーンとの闘いに決着がつかないまま「第一部完」として未完の状態なのが残念ですね。1978~1979年のTVアニメはほぼリアルタイムで見ていましたが、こちらは妙にあっけなく決着がついてしまったような記憶があります。2013年公開のCGアニメ版映画も観ましたが、これはちょっとなあ……。ハーロックはむしろその後の他の作品に登場する姿が有名ですね。

常設展受付の方はメーテルのコスプレのお姿。写真を撮らせて頂けないか伺ったところ、「ここでならいいですよ」と快く応じてくださいました。ハーロックとのツーショットです♪

漫画閲覧室にいた「トリさん」。これも松本キャラの中で結構好きです。
さてこの日行ってみて催されていることを知ったのが、
「萩尾望都SF原画展 宇宙にあそび、異世界にはばたく」。
実は去年は神戸で催されていたのですが、この時は行くことができなかったのですよ。
「日本の少女漫画史におけるSFの黎明期を担った萩尾望都のカラーイラストレーション、コミック生原稿など、約400点のSF原画が大集合」とのこと。ちなみに萩尾望都氏は福岡県大牟田市のご出身だそうで。やはり福岡ゆかりなんですね。

私にとっての萩尾望都作品は
「百億の昼と千億の夜」(原作:光瀬龍(1965~1966)、漫画1977~1978)、
「スター・レッド」(1978~1979)、
「11人いる!」(1975)。
これは左が
「百億の昼と千億の夜」の阿修羅王、右が
「スター・レッド」の徳永星(セイ)ですね。
その昔、
ホームページに書いた拙文でも触れましたが、
「スター・レッド」は火星を舞台にしたSFの最高傑作の一つだと思います。

こちらのポスターは
「11人いる!」ですね。この作品は11人の登場人物が個性豊かで魅力的でした。誰が11人目か? という謎解きも面白かったですが、Wikipediaでは完全にネタバレしちゃってるなあ……。

こちらは
「百億の昼と千億の夜」のクライマックス近く、阿修羅王が帝釈天の軍勢(の幻影)と戦う場面ですね。
「百億の昼と千億の夜」は最初に光瀬龍氏の小説を読んだのですが、十分ついていけず、初めはあまり理解できませんでした。その後萩尾望都氏の漫画版を読んで内容を把握でき、その上で改めて小説を読み直して、原作のすごさに気付かされたものです。
物語の最初の方、国を捨ててシッタータが出家しようとする場面で、「この世のすべてのことは梵天、天の意思による」と説く波羅門に対し、老ウッダカが叫ぶ言葉……
「不幸もか! 人の世の不幸もか! 釈迦国の難儀もか! 貧しさや病気も苦しみもか! それ一切も天の意思か! あなたの出家もか! それではいったい何のための天ぞ!」 この言葉にすでに作品のテーマが凝集されているように感じます。
「私は相手がなにものであろうと戦ってやる! この私の住む世界を滅ぼそうとする者があるのなら、それが神であろうと戦ってやる!」そして阿修羅王は戦いを挑み続けますが、物語のラスト、戦いの相手は突き詰めれば「この宇宙の外側の存在」という絶望的なまでに圧倒的な存在であるらしいことが示唆されます。
元旦に書いた記事で紹介した小松左京
「果しなき流れの果に」ではこの宇宙を管理する時間管理者に対して戦いを挑みますが、これは
「百億の昼と千億の夜」における神との戦いと通じるものがあります。圧倒的な支配者に対して戦いを挑むという姿は、普段抗いがたい様々なものに抑圧されている庶民にとって、とても惹かれる姿といえるのかも知れません。
また
「果しなき流れの果に」は「この宇宙の進化を外側から垣間見る」という点で世界でもっともスケールの大きな作品の一つではないか、と書きましたが、
「百億の昼と千億の夜」も「この宇宙の外側の存在」を示唆するあたり、やはり世界でもっともスケールの大きな作品の一つだと思います。
そういえば
「果しなき流れの果に」と
「百億の昼と千億の夜」は同じ年の作品でもあるんですね。日本SF史の中でも特筆すべき時代だったといえるかも知れませんね。

売店で見つけた、
「百億の昼と千億の夜」の阿修羅王と
「銀河鉄道999」のメーテルが一緒に描かれたクリアファイル。二人の組み合わせが何とも不思議な感じがして購入しました。時の彼方をめぐるメーテルと、時の果てまで戦い続ける阿修羅王がもしも出会ったら、どんな物語が紡ぎだされるのでしょうか。想像が膨らみます(^^)