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『復活の日』 -映画にはない原作小説の視点-

へろんです。
新型肺炎の影響、なかなか先の見えない状況が続いていましたが、関西はようやく緊急事態宣言解除となりそうですね。その他はもうしばらくかかりそうですが……

このご時世にのんきな様子を公開する右のオッサンって何なんだ

それにしても……右のヒト、これ、イヤミ? それともこのポスターを作った人は、本気でこれで良いと思ってんの??
左の人はむろん良いとして、このご時世にのんきな様子を公開する右のオッサンって、いったい何なんだ。在宅だからって庶民は楽してるわけじゃおまへんで。慣れないテレワークに四苦八苦するサラリーマンとか、子供も在宅になって普段よりはるかに多い家事に追われるお母さんのことを分かってるのかしらん。せめて自宅でパソコン打ったり電話したり仕事してる様子を写すんならマシだったでしょうに……。

すでに書きましたように、私の最も敬愛するSF作家、小松左京先生の『復活の日』(1964)は未知の病原体の大流行により人類が滅亡の危機に瀕するというSF小説で、今回の新型肺炎流行とそっくりの光景が描かれています。
その割にはこれまで意外と取り上げられてきませんでしたが、一つには、あまりにも当たりすぎていて「シャレにならない」からだろうか、と思っていました。作中でもスポーツイベントや映画が次々中止になったり、満員電車が空きはじめ、医療現場は大混乱し、さらに作中のソ連首相が急死して軍縮交渉が流れる描写もあるので、英首相が入院した、という現実の報道にはぎょっとしましたね。
少なくとも日本ではやっと落ち着いてきた最近になって、ようやく取り上げた記事を目にするようになってきたようです。

      *      *      *

『復活の日』は1964年と、今から56年も前に発表された作品ですが、他の小松作品同様、携帯やインターネットがないくらいでほとんど古さを感じません。

『復活の日』表紙

一方で、1980年には映画版が公開されます。

映画『復活の日』パンフレット

公開当時は観に行くことができませんでしたが、その後レンタルビデオで観ました。パンフは後に古書店で入手したものです。
映画は好成績を上げたものの、南極ロケを敢行したりして莫大な製作費をかけたため赤字だったとか。

小松先生自身は自作の映画化作品の中ではこの『復活の日』がいちばん気にいっていたという話もありますし、現在ネットで見ても、『復活の日』は映画作品として取り上げている人が多いようですが……いくつかの点から、私は原作(小説版)の方に軍配を上げています。

まず映画版では過剰にパニックを描いたりして、庶民への悪意を感じます。
『復活の日』に限らず小松作品全般に言えることですが、単に面白おかしくパニックを見せつけるような作品とは違い、小松先生の小説では個人も組織も、できる範囲でできる限りの奮闘を続けています。むろん現実にはいろんなバカどももいますが、庶民が騒がず落ち着いて行動する様が海外で称賛される日本社会は、映画よりも小説により近いのではないでしょうか。
何より、頑張る人々や組織を描くことで、人を信じる気持ち、優しさを感じるんですね。

もう一点、ビデオで見た時はどうだったのか忘れてしまいましたが、角川文庫の映画シナリオ版を読んだ時、「ソ連のミサイルは結局どうだったのか?」という点が小説と反対の結果になっているのを発見しました。
その意味を詳しく書くとネタバレになってしまうのですが、米ソ冷戦のさなかに描かれた作品のこと、アメリカやソ連もそれぞれの事情を抱えて対立しながらも、同じ人類として、やっぱり「頑張る人々や組織」の一員のはず。
原作でもそうだったのであれば仕方ないのですが、原作でそこまで悪く描かれていない存在を、ことさら悪者に仕立て上げるのはいかがなものでしょうか(ちなみに原作小説では米原潜と一緒に活躍しているソ連原潜《T-232》も、映画での扱われ方はヒドイ)。

東日本大震災時の福島第一原子力発電所事故を題材にした『Fukushima50』では、作中の「総理大臣」の描き方に悪意を感じるという意見をよく目にします。
また同じ小松左京先生原作の『日本沈没』は2006年にリメイク版が公開されていますが、原作のテイストを引き継ぐ数少ない主要キャラである首相をさっさと退場させ、原作では良い味の政治家をわざわざ悪役に仕立て上げて、あげく日本政府はさっさと国民を見捨てる。そして結局は、個人を英雄に仕立てたヒーロー物語にしてしまった。
この映画の監督さんか脚本家さんは、組織が嫌いなんですかね。 日本政府を信じてないんですね。 おまけに原作にはないパニックをわざわざ民衆に起こさせ、しつこく描写して……つまり、一般大衆も信じてないんですね。

数多くのパニック小説や破滅小説は、殺しまくってそれで終わりですが、小松作品ではそうした作品で感じる不快感をほとんど感じません。なぜだろう、と長い間考え続けているのですが……
最近では、多くの作品でよくある「悪者」を仕立て上げていない、「悪者」がいないことが理由の一つではないかと思っています。

『復活の日』を語る際には、ぜひぜひ小説版をお読みのうえで、取り上げて頂ければと思います。

      *      *      *

上記の小説と映画の違い、「ソ連のミサイルは結局どうだったのか?」という点を説明するとどうしてもネタバレになりますので、追記として、ネタバレを含むあらすじを書いておきます。ネタバレありをご了承のうえで、下の「続きを読む」から、または以下の文章にお進み頂きますよう、お願いいたします。
(以下の文章、PCでは「続きを読む」で別ページになるのですが、スマフォで見ると別ページにならず一続きに表示されてしまっていますね。どこか設定しないといけないんでしょうか??)

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ようやく

新居でインターネットが開通しました。
ご無沙汰しております、へろんです(^^;)

新型肺炎の影響で回線工事がだいぶ先になると言われてから約半月。ようやく昨日、その日の午後から来るという話だったのですが、11時半ごろに突然電話があり、
「今からおうかがいしても良いですか!?」とのお話。
12時前にはいらして約30分の工事でしたが、その終わり頃にはまたどこかへ電話されて「今からおうかがいしても良いですか!? 15分ぐらいしたらおうかがいできると思います!」

新型肺炎の対策で人手も減らされているので、どんどん前倒しで行かないとこなしきれないのだそうです。昼食時に来られてもなあ、とは思う一方、来る方も大変だなあ、こんなんじゃあ昼休憩もとれないんじゃないかなあ、と心配してしまいます。

そういえば連休中のある日、必要なものがあったので某イオンに出かけたのですが、新型肺炎対策ということでレジの数を減らした結果、開いているレジに人が集中して長蛇の列になっていました。
「数を減らしてもそこに人が集中してしまったら何やってるか分かりませんで」と冗談ぽく言いますと、「そうですよねえ、すみません」とレジのおばさんも苦笑交じりに答えて下さいましたが……

      *      *      *

さて私は在宅勤務中のため、1時以降はPC設定を妻に任せましたが、説明書通りにやってもどうしてもうまくいかない。コールセンターに問い合わせてしばらくやり取りした結果……ようやくいつものトップページが表示されました。
で、後から訊いてみますと……

「結局、説明書通りのやり方ではダメだったの?」
「それだと絶対にできんかった」
「それ、(説明書としては)あかんやん……」

いろんな種類や条件がありすぎて説明書では網羅できないのでしょうか。
前職の仕事でも思いましたが、「世の中どんどん必要以上に複雑になってるよねえ」と顔を見合わせたのでした ( ̄▽ ̄)

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Author:へろん
へろん(♂)としろ(♀)の夫婦ですが、最近はへろん一人で書いてます。「御朱印」「SF」が多くなってますので、カテゴリからご興味のあるジャンルをお選び下さい。古い記事でもコメント頂けると喜びます。拍手コメントは気付くのが遅れてしまうことがありますが、申し訳ございません m(_ _)m

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