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「国葬」は「パンドラの箱」を開けるか

 2022年7月8日、安倍元首相「暗殺」事件が発生しました。
 各人がそれぞれの立場や思想で追悼の意を表することに何の異論もありませんが、何故かすぐに「国葬」が取沙汰され始め、あれよあれよという間に「国葬」決定。物価高をはじめとする経済問題や新型コロナの陽性者急増には何もしないくせに、「国葬」だけはあまりにも拙速・強引に決めてしまったのは何故なんでしょうか。
 要するに、選挙で大勝した余勢をかって、人気取りの役に立つと思ったからでしょうね。
 個人的には ー 仮に、もし仮に、安倍氏が「暗殺」されなかったとしたら、「国葬」はなかったでしょう。ということは、「国葬」は本来あってはならない「暗殺」に、意味づけをしてしまうことになります。という観点から、「国葬」には反対しています。

      *      *      *

 事件直後は「民主主義への挑戦」「民主主義を守る」と、自分たちこそその旗手なんだ、と威勢のいいことを叫ぶ人たちがいましたが、ご承知のように犯人の動機は宗教組織への恨みから、ということが知れ渡ると、そんな声はすっかり霞んでしまいました。
 それでもなお推し進められる「国葬」。いや、それより原因となった宗教組織の問題追及が先でしょうが。

 7月18日、海の日。
 以前書きましたように最近Twitterを触り始めているのですが、PC画面右に現在のトレンドが表示されることを知ったのは最近のこと。
 この日ふと見ると、
2022年7月18日ツイッタートレンド
2つのハッシュタグが表示されていました。
 どちらも何が話題になっていたかはすぐご理解いただけると思います。朝日新聞は例のあの川柳ですね。しかし一方では政府べったりの新聞が大手をふってる世の中ですから、逆の立場としてあれぐらいはあっても別に良いと思ってます。ダメって言ったらそれだって言論抑制につながりますって。
 一方の、宗教組織の問題、これは今現在でもどんどん広がりを見せていますね。

 こうした言葉がもろに出てくるのがTwitterのすごさでもあるのでしょうが、この度の「暗殺」事件そのものが、これまであまり露骨に言い出さなかったことを、あまりにもストレートに露呈させてしまう、言うなれば日本社会の「パンドラの箱」を開けてしまったのではないかと感じます。

 こちらの記事によれば、「国葬」賛成42% 反対49%。
 最新の記事でも、共同通信社の調査によれば、賛成45%、反対53%。
 その他の報道でも、いずれも賛否がほぼ拮抗しています。つまりこの事件は、そして「国葬」は、国民を二分するきっかけとなった様相を呈しています。
 ところが。

 自民党の茂木幹事長は「国民から『国葬はいかがなものか』との指摘があるとは、私は認識していない」「野党の主張は聞かないとわからないが、国民の認識とはかなりずれているのではないか」と発言(出典ほか)。
 国民の半分の意見を「認識していない」って、要するに聞く耳持たないということでしょうか。「もしも反対意見があればじゃんじゃん寄せてください」というのが本物の民主主義じゃないですかね? 茂木氏自身が「民主主義からずれている」と感じますね。
 ちなみにこの方、2022年6月19日のNHK日曜討論で、消費税減税なら年金を3割カットだ、と国民を恫喝した人です。
 一ヶ月ちょっと前のことですが、覚えておられます?

 事件以降、与党と宗教組織との関係がどんどん報道されています。
 こちらの記事によれば、山本元防衛副大臣は2017年5月、宗教組織主催のイベントに出席、「本当に皆様には我々自民党に対して、大変大きな力をいただいていることを改めて感謝申し上げたいと思います」
 自民党・工藤彰三衆院議員「反社会的勢力と認定されれば関係を絶つが、そうではないので、お付き合いしていくつもり」
 自分で判断できないんですか?
 自民党・福田達夫総務会長は「なんでこんな騒いでいるのか正直言ってよくわからないというのはあります」と言ってたのを批判を受けて「被害を生み出すような社会的に問題が指摘されている団体との関係が問題であることは言うまでもありません。それゆえに、自分としてはそのような団体との付き合いはしておりません」と釈明。
 じゃあね、自分が付き合いしてないからそれで良いって言うんじゃなくて、周りに付き合ってる人がいたら、ちゃんと批判してくれるんでしょうね?
 岸信夫防衛大臣は記者からの質問に、「そういうこと(社会的問題)が言われている団体であるということは、認識をしておりました」
 認識したらその次は? 認識したうえで、付き合って良いと思ってるのか否か、は?

 文字通り、与党と宗教組織の関係は枚挙に暇がないという状況ですね。

      *      *      *

 この事件は国民を二分した、と上で書きましたが、一方でちょっと意外な記事もありました。
 「ネトウヨかパヨクか」二元論の危うさ、安倍元首相の銃撃事件でSNSは混乱」という記事によれば、単純な「右」とか「左」とかに色分けできないので、ネット民が混乱しているのだとか。
 「銃撃犯のものとされるツイッターアカウントが発見された」ものの、それによると「犯人自身が、ネトウヨだとみなされることもあると自覚しつつ、しかしそれほど単純な存在ではないと示したかったようにも見える」のだそうです。
 また犯人だけでなく、「単純な二項対立の世論から変わりつつあるもう一つの理由は、安倍元首相がビデオメッセージを送るなど友好的に見える姿勢を示していたことだろう」「「ネトウヨ」の特徴の一つが「嫌韓」であることを考えると、これは彼らにとって大きな矛盾だろう」
「ネット上でとうとうと語られてきた対立構造がいかに表面的で、実のないものだったか。その一端が、今回の事件以後に明らかになったのである」

 世の中単純に「白」か「黒」か、「右」か「左」か、「善」か「悪」か、「上」か「下」か……で割り切れないことは、小さい頃から教わり、経験を経て、言われるまでもなく当然のことと思っていました。しかし今の若い人たちやいわゆるネット民とかは、本当に単純な二項対立でのみ考えているんですかね?
 社会科の授業で、何でも白か黒か決めつけてしまうのは権威主義的で危険なことだ、と教わってきました。現実には、例えばですがエコロジー活動を推進しつつ原発も認めたり、憲法九条を堅持しつつ防衛力も保有する等々、可能であり必要であり現実的と考えています。でなければ現実ばかり主張して何もしない与党と、理想ばかり主張して何もできない野党のみになってしまいます。

 このたびの事態がこじ開けた「パンドラの箱」が、もしも単純な二項対立の思考から脱するきっかけになるのであれば……それこそが神話で箱の中に最後に残っていた「希望」の一つとなる、かも知れません。

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テーマ : 政治・経済・時事問題
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猫と巨人 - 代田八幡神社(東京都世田谷区)

 東京に来てから通勤経路に近い神社を探してぽつぽつとお詣りしてきた神社の一つに、代田八幡神社があります。
 東京都世田谷区代田に鎮座、最寄り駅は小田急電鉄小田原線の世田谷代田駅。
 隣駅の梅ヶ丘からすぐの羽根木公園は梅の名所だそうです。2021年2月、梅を目的にこのエリアを訪れていました。

羽根木公園の梅


羽根木公園の梅


羽根木公園の梅
 満開までもう少しといった感じでしたが、とてもきれいな梅林でした。
 そして徒歩で代田八幡神社へ。

代田八幡神社鳥居
 実は環七通りを自動車で走っているとこの鳥居が目に付き、気になっていました。

代田八幡神社鳥居
 正面にももう一つの鳥居が。
 説明板によると、こちらの鳥居は1758年(天明5年)奉納されたもので、世田谷区内では2番目に古く、1654年(承応3年)建立の喜多見氷川神社の鳥居に次ぐものだそうです。1923年(大正12年)の関東大震災で傾き、その修理の時に正面を裏に向けてしまったと伝えられてるのだとか。

代田八幡神社手水舎

代田八幡神社本殿
 1945年(昭和20年)、空襲により社殿、神楽殿、社務所など全てを焼失。1949年(昭和24年)に社殿、1960年(昭和35年)に神楽殿と参集殿が再建されたのだそうです。
 他の神社仏閣でもいろいろ見かけましたが、東京では戦災と震災にまつわるものが多い気がします。

代田八幡神社の「ふくちゃん」
 授与品の中でも目に付くのが、2018年に「ふくもの隊」というグループ?とのコラボで生まれた「代田八幡神社公認の代田限定の縁起物」、福猫のふくちゃん。

代田八幡神社の「ふくちゃん」
「ご祈祷済みにゃす」がカワイイ。

代田八幡神社の「ふくちゃん」
 ということで我が家にもお連れしましたよ。
 以前豪徳寺の招き猫も紹介しましたが、東京は猫にまつわるものも多いような気がします。

代田八幡神社御朱印
 御朱印にもしっかり「ふくちゃん」が。

代田八幡神社のオリジナル御朱印
 ちなみにオリジナル御朱印帳もありました。

 さてこの「代田」という地名、あとから調べてみると、何と伝説の巨人「ダイダラボッチ」に由来するといわれるのだとか(!)
 この日は別方向へ歩いていったため最寄りの世田谷代田駅には寄らなかったのですが、別の日に改めてこの駅を訪れてみました。

世田谷代田駅前広場のダイダラボッチ足跡
 駅前広場には何とそのダイダラボッチの足跡が描かれています。グレーの部分ですが、かなりでかい。もっと上から見ないと分かりにくいですかね?

世田谷代田駅前広場のダイダラボッチ足跡
 親指方向から見た方が、まだ足跡として分かり易いですかね。

「代田とダイダラボッチ」解説
 広場の説明板によれば、かつてこの地の北東部にとても大きな窪地があり、巨人の足跡に見立てて「ダイダラボッチ」と呼ぶようになったのだとか。かの柳田國男の著書『ダイダラ坊の足跡』(1927)でも言及されているそうです。

 ダイダラボッチといえば、富士山を作った時に掘った跡が琵琶湖だとか、手を付いた跡が浜名湖だとか、壮大な民話が各地にあります。恐ろしい怪物というよりは、子供が砂場で穴を掘ったり山を作る光景を連想する、どこかのどかなイメージがあります。
 ダイダラボッチは『もののけ姫』(1997)で知った、という方も多いかも知れませんね。ただあれを見た時は「一般的なダイダラボッチのイメージとはなんか違うな?」と思ったものです。巨人つながりで名前を拝借して創作されたものなんでしょうね。
 ダイダラボッチは昔から民話としてまた伝奇モノやSFとしてもよく見かけてきたので馴染み深く感じますが、特に印象に残っているのは星野之宣先生宗像教授シリーズ第一作「巨人伝説」(1990)。(もののけよりもだいぶ前ですよ!)
 宗像教授シリーズは(オリジナルか元ネタがあるのかは分かりませんが)民俗学的な課題に独創的ながらも魅力的な説を宗像教授が展開する興味深いシリーズですが、その第一作は作中でダイダラボッチが現代に本当に出現してしまうという異色作。まだシリーズ化されるかどうかも分からない段階で描かれた実験作だったんでしょうね。

 ふくちゃんという猫とダイダラボッチという巨人、面白いものに触れることのできるエリアでした(^^)


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テーマ : 御朱印めぐり
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大きな振り子がまた一つ……

 2022年7月8日。
 インターネットで調べ物の最中、安倍晋三元首相が奈良市内で銃撃されるという、とんでもないニュースが目に飛び込んできました。
 そして夜には亡くなられたとの報道。
 謹んでご冥福をお祈りいたします。

 この事件は海外でも大きく報道され、かの銃社会アメリカでさえ衝撃的だったようで……アメリカの要人や各紙の反応などは、こちらの記事「安倍元首相「暗殺」と一面で報じた米メディア 同盟国アメリカの受け止めは?」の紹介が詳しそうです。

 事件による心配な影響の一つに、一部の「有名らしい」輩などが、これまでの安倍氏に対する批判が事件につながったんじゃないか、という極端なこじつけを言いだしていますが、それもまた一種の「言論封殺」につながりかねない危ない話になります。
 むろん批判の仕方、程度問題はそれぞれのケースごとに適切なレベルというものがあるでしょうが、それはそれとして、批判することを批判する、ということはあってはならないでしょう。それに、だったらよく問題になるネット上の過激な連中を何とかしてほしいもんですが。
 安倍氏が救急搬送された奈良県立医科大学付属病院に対してクレームの電話が相次いでいるとの報道(安倍元首相治療の奈良医大病院にクレーム殺到で憤る声…)もありましたが……いやちょっと、そんなクレームを上げるのって何考えてるんですか!?

 ご承知の通り、犯人は「(本当は)恨みのある宗教団体幹部を狙うつもりだった」と述べており、その宗教団体はどういうわけか公表されていませんが、「自民党と同団体の繋がりは古くから指摘されてきた」のだそうです「安倍元総理殺害「山上容疑者」が8畳ワンルームで募らせた宗教団体への恨み」
 ネット上ではその宗教団体の「候補」がいくつか取り沙汰されてはいますが、公表しないのは明日10日に投票日を迎える選挙に対する「忖度」なのではないか、とさらなる憶測を呼んでいるようです。
 選挙があろうがなかろうが、情報は公開されるべきものではないでしょうか。要するにまだ確定ではないから公表しない、ということではないかと思ってはいますが……。

 至極当然といえば当然ですが、この事件についてはおそらくすべての政党が、一個人としての安倍氏を追悼し、「民主主義に対する挑戦」として最大限の批判を行っています。
 この事件についてはすべての政党の方向性は一致しており、争点にはなりようもないはずです。
「公明党関係者は「与党が苦戦している選挙区で風向きが変わるかもしれない」と漏らした」(安倍氏銃撃死、政権に激震 参院選中の凶行、影響不可避)という報道もありますが、あかんやろう、そういうこと言ったら……。

 この事件によって、投票行動や投票先が変わることは、本来ないはずです。

      *      *      *

 かねてよりこのブログで書いてきましたが、日本は時折、振り子が大きく振れて極端な方向へ走ってしまう傾向があると感じています。
 2022年2月にロシアによるウクライナ侵攻が始まり、「国家による暴力」から来る衝撃が、この振り子を大きく振るだろう、と感じました。
 そして今回、「個人による暴力」でこの振り子がさらに大きく振れることになるかも知れません。
 2022年を象徴することになるであろう事件が「暴力」によるものになってしまったことは残念でなりませんが、振り子をどの方向に振るか - それを決めるのは「暴力」ではなく「選挙」である、という点は信じたいものです。

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へろん(♂)としろ(♀)の夫婦ですが、最近はへろん一人で書いてます。「御朱印」「SF」が多くなってますので、カテゴリからご興味のあるジャンルをお選び下さい。古い記事でもコメント頂けると喜びます。拍手コメントは気付くのが遅れてしまうことがありますが、申し訳ございません m(_ _)m

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