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2019年映画その2『僕のワンダフル・ジャーニー』

へろんです。
2019年に観て非常に良かった映画、『アルキメデスの大戦』に続きまして、2本目『僕のワンダフル・ジャーニー』です。

『僕のワンダフル・ジャーニー』チラシ

2017年に公開された『僕のワンダフル・ライフ』では、ベイリーと名付けられたゴールデン・レトリバーがイーサンという男の子の家に飼われることになり、以後何度も別の犬(犬種は様々)に生まれ変わりながら、50年後に再びイーサンと再会します。イーサンを慕うベイリーが無事彼の元に戻り、不器用なイーサンもまたベイリーの出現によって、犬だけではなく他人とのつながりも取り戻す、素敵なハッピーエンドの作品でした。
その続編である『僕のワンダフル・ジャーニー』では、開始から間もなくベイリーは天寿を全うして生涯を終えます。しかしイーサンの「僕を幸せにしてくれたように、CJ(イーサンの義理の孫娘)を幸せにしてやってくれ」という言葉を受けて、再び生まれ変わりの旅に出ることになります。

孫娘の「CJ」って吹き替えでも全部「CJ」とだけ言ってて、何でこう呼ばれてるんだろう、と不思議だったのですが、どうやら「クラリティ・ジューン」という名前のようです。欧米ではこのようにイニシャルで呼ぶことも多いんですかね?

それはともかく、ベイリーは再び生まれ変わりながらCJに寄り添おうとします。そうとうダメダメな脇役が何人か出てきて紆余曲折を経ながらも、ベイリーの助け(?)を得て、CJも己の人生を掴んでいきます。
いちばんラストで、ベイリーがイーサンの元に駆け寄っていくシーンがいちばん感動的でしたね。イーサンという一人の人間の人生と、その飼い犬の「犬生」とを、2作に渡って描き切ったわけですが、普通に考えれば犬の寿命は人間に比べてはるかに短いため、同等に描くのは難しいですよね。そこを、生まれ変わりによってつないでいくことにより、人間と犬を同等の時間軸で描くことに成功したといえるかもしれません。
ただしイーサンやCJと一緒だった時以外の飼い主のエピソードが相対的に扱いが低くなって、その点難しいなあ、とも思わされます。

      *      *      *

この作品では犬の視点がコミカルに描かれていますが、犬の視点で思い出すのが、クリフォード・D・シマックの古典的名作SF『都市』(1952)。人類が滅亡した遥かな未来、犬がかつて存在した人間の伝説を語る、という壮大かつ奇想天外な物語です。
このSFで犬にまつわるシーンで気に入っているのは、遥かな未来よりも、まだ人類が存在していた時代の木星でのエピソード。木星のある存在に同化することにより、人間と犬との意思疎通も可能になります。そこで人間が飼い犬に「ようやく話せるようになったな」と言うと、犬は「俺はずっと前からあんたに呼びかけてたんだぜ」と応えるのです。

また生まれ変わり、「輪廻転生」ともいう考えを描いた作品は数多くありますが、私が真っ先に思い出すのは、手塚治虫先生の『火の鳥』

「ニュータイプ100%コレクション 火の鳥」

『火の鳥』各編の中でも輪廻転生に係るエピソードがよく出てきますが、ここで描かれる生まれ変わりは、また人間に生まれ変わるとは限らない(むしろ難しい)ことが特徴になっています。
『鳳凰編』では茜丸がいろんな動物に生まれ変わっていく幻を見、実際に死に直面した時、火の鳥から「二度と人間に生まれ変わることはない」と宣告されます。
『乱世編』では、平清盛が高僧の明雲に死後の世界について尋ねるシーンがあります。

「地獄、極楽はこの世にございます。例えばお上は奈良の神社仏閣をことごとく焼き尽くされました。もしお上がそのことでお悩みなら、お上は今、地獄におられます」

という明雲の言葉は『火の鳥』全編の中でも印象深い言葉の一つですが、これに続けて明雲は、「おそらく人間は生まれ変わる、ただしもう一度人間になれる保証はない」とも述べています。

これは人間だけが特別な存在ではない、命の重さはどの生き物も同等、という東洋的な思想に結びついているのでしょう。
『生命編』では瀕死の地球環境にあって、猿田博士が
「人間が何だというんじゃ。今はもう人間も虫も植物も区別は無い!」
「そうだ、生物家族だ。なにかひとつが生き残ればそれでいいのだ。例え人間は滅んでも」
という場面がありますし、『鳳凰編』の我王の悟りにも同様の内容があったと記憶しています。

      *      *      *

『僕のワンダフル・ジャーニー』でベイリーが犬以外に生まれ変わったらもっと大変だったろうなあ、と思いますし、これがもし人間にでも生まれ変わったらややこしい話になってしまいそうですが、人間との関係において犬が犬に生まれ変わる、そこはやはり西洋的な思想がベースになっているように感じます。
生まれ変わりや輪廻転生が本当にあるか……現代科学ではやや否定的のような気はしますが、まだ100%否定されたわけではありませんし、せっかく生まれた生命、せっかく生きた証というものは、何らかの形で受け継がれ、記憶されていってほしいものですね。

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