東北大学理学部自然史標本館
へろんです。
本ブログ博物館紹介の第一弾は、2月の仙台出張の折に訪れた東北大学理学部自然史標本館。仙台市地下鉄東西線の青葉山駅からすぐの便利な場所にあります。この日は雪が降ったりやんだりのあいにくの天気でしたが、実は10年前の2007年5月にも訪れたことがあります。この時はとても良い天気でした。

ただこの時は地下鉄もまだ開通しておらず、結構歩いた記憶があります(本当はもっとそばまでバスで行けたはずなのに、大雑把な地図で歩けると判断して歩いてみると、予想外に遠かった、というのが実態だったはずです。今は地下鉄で行けるのでとても楽になってますね)。

博物館入り口。……ん? 10年前は気付きませんでしたが「東北大学理学部自然史標本館」と「東北大学総合学術博物館」の2つの看板が掲げられていますね。
実はこの看板だけでなく、ホームページや観光案内などを見ても、この二つが併記されていたり、片方がカッコに入っていたりしています。はたしてこの2つは同じ施設の別名なんでしょうか、それとも違う施設なんでしょうか?
東北大学のHPの中には、二つの名前が併記されたページがあります。さらに、展示案内には 「総合学術博物館の常設展示は理学部自然史標本館にて行なっています」 とあります。
Wikipediaの東北大学総合学術博物館のページには「博物館発足以降、現在に至るまで、事務室および常設展示は、既存の理学部自然史標本館に間借りしている状態である」とあります。

2007年当時にもらったニュースレター「Omnividens」No.21~23には、「総合学術博物館の建物については現在建設設計途中ですので、理学部自然史標本館を共用しています」とありました。
今回、2017年にもらった「Omnividens」No.49~52には、「総合学術博物館の常設展示は理学部自然史標本館にて行っています」とありました。10年前には書いてあった建設計画は今どうなったんでしょうね……? 気になるところです。

2007年当時の自然史標本館のリーフ。リーフの館内案内図を見ると、2階の一角に 「総合学術博物館紹介コーナー」 とあります。ここがその 「間借りしている」 という場所でしょうか。

しかし今回、2017年のリーフでは、10年前に 「総合学術博物館紹介コーナー」 となっていた場所は 「さまざまな学術資料標本」 となっています。
思うに、10年前は自然史標本館と総合学術博物館は明確に区別されて別途建設計画もあったようですが、2017年現在はその境界が曖昧になっているような気がします。
それでも良いのではないでしょうか。世の中、博物館も含めていろいろなところで理系、文系に分けようとすることが多いですが、知的好奇心を満たす場所に理系、文系の区別を無理につける必要は本来ないと思っています。どちらも互いに手を取り合って発展していってほしいものですね。
さて、いよいよ理学部自然史標本館の展示の中で気に入ったものを紹介したいと思います。

ステゴサウルス・ステノプス Stegosaurus stenops
展示室に入るとすぐ出迎えてくれます。背中の板状の列がとても有名な恐竜です。時代はジュラ紀後期(約1億5000万年前)、産地はアメリカのユタ州。

ステゴサウルスの展示から離れたところですが、展示室の一角にあったホワイトボードに、こんなミニ知識が書いてありました。
Stegosaurus という属名はラテン語で「屋根トカゲ」という意味で、小さい頃から何で屋根なんだろう? と思っていましたが、昔は背中の板が亀の甲羅のように背中を覆う形で復元されていたのだそうです。なるほど、それが屋根みたいだからなんですね。

フクイラプトル・キタダニエンシス Fukuiraptor kitadaniensis
2013年7月に新しく展示されたそうです。白亜紀前期に生息していた、アロサウルス上科に属する肉食恐竜。恐竜化石の産出で有名な福井県勝山市北谷で発掘され(種小名のkitadaniensis はその発掘地にちなむようですね)、日本で初めて学名の付いた恐竜として有名。大腿骨の長さから、全長は約4.2メートルと推定されるそうです。

アノマロカリス・カナデンシス Anomalocaris canadensis
5億年以上前のバージェス動物群の代表的動物。この実物化石が見られるのは珍しいのではないでしょうか。全体像が不明の頃、こうした化石はエビの仲間の腹部と思われ、「anomalo(奇妙な)+ caris (エビ)」と名付けられたそうですが……

全身復元模型。「奇妙なエビ」の正体は頭部の触手部分でした。

ニッポニテス・ミラビリス Nipponites mirabilis
日本を代表する異常巻きアンモナイト。
かつては種としての末期的な症状である奇形といった見方をされていましたが、現在では規則性を持った巻き方であり、様々な環境に適応した進化の一例とされているのは有名ですね。しかしそうなら、現代の生物にどうしてこうした巻き方がないんでしょうね?

プラビトセラス・シグモイダーレ Pravitoceras sigmoidale
S字状に巻いた殻をもち、日本で産出する異常巻きアンモナイトの中でも、とくに変わった巻き方するもののひとつ。淡路島でポピュラーな化石だそうです。

放散虫の巨大な模型。実物は顕微鏡でないと観察できないような微細な原生生物です。

津波堆積物はぎ取り標本。地上から4.5メートルまでの地層を示したものです。通常堆積しているものと異なる特徴がある(例えば耕作土の間に、通常は堆積しない砂層がある)と、そこで津波があったと推察されるようです。いちばん左の地表近くは2011年の東日本大震災の時の津波跡、いちばん右の下、もっとも古い地層は約6000年前と書いてありました。数えると、この6000年の間に12回の津波の痕跡があったようです。

天井から吊るされたイワシクジラの骨格標本。1915年に宮城県鮎川町(現:石巻市)で陸揚げされたもので、骨格の全長は14メートルもあるそうです。左下方にフクイラプトルやステゴサウルスの背中が見えていますが、現生生物にも大きなものがいることを改めて実感します。

冬虫夏草標本。虫の体からうにょうにょと生えている子実体が、奇妙というか不思議というか不気味というか……。山形県の研究者、矢萩信夫氏によって採集された標本だそうです。

かの小惑星探査機はやぶさの1/10模型も展示されていました。
一通り見て感じたのは、各時代ごとの古生物の化石が充実していることでした。様々なバリエーションを持つ三葉虫やアンモナイトの化石は見ていて飽きません。小さめの博物館ですが、見所が多く充分楽しめました。

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本ブログ博物館紹介の第一弾は、2月の仙台出張の折に訪れた東北大学理学部自然史標本館。仙台市地下鉄東西線の青葉山駅からすぐの便利な場所にあります。この日は雪が降ったりやんだりのあいにくの天気でしたが、実は10年前の2007年5月にも訪れたことがあります。この時はとても良い天気でした。

ただこの時は地下鉄もまだ開通しておらず、結構歩いた記憶があります(本当はもっとそばまでバスで行けたはずなのに、大雑把な地図で歩けると判断して歩いてみると、予想外に遠かった、というのが実態だったはずです。今は地下鉄で行けるのでとても楽になってますね)。

博物館入り口。……ん? 10年前は気付きませんでしたが「東北大学理学部自然史標本館」と「東北大学総合学術博物館」の2つの看板が掲げられていますね。
実はこの看板だけでなく、ホームページや観光案内などを見ても、この二つが併記されていたり、片方がカッコに入っていたりしています。はたしてこの2つは同じ施設の別名なんでしょうか、それとも違う施設なんでしょうか?
東北大学のHPの中には、二つの名前が併記されたページがあります。さらに、展示案内には 「総合学術博物館の常設展示は理学部自然史標本館にて行なっています」 とあります。
Wikipediaの東北大学総合学術博物館のページには「博物館発足以降、現在に至るまで、事務室および常設展示は、既存の理学部自然史標本館に間借りしている状態である」とあります。

2007年当時にもらったニュースレター「Omnividens」No.21~23には、「総合学術博物館の建物については現在建設設計途中ですので、理学部自然史標本館を共用しています」とありました。
今回、2017年にもらった「Omnividens」No.49~52には、「総合学術博物館の常設展示は理学部自然史標本館にて行っています」とありました。10年前には書いてあった建設計画は今どうなったんでしょうね……? 気になるところです。

2007年当時の自然史標本館のリーフ。リーフの館内案内図を見ると、2階の一角に 「総合学術博物館紹介コーナー」 とあります。ここがその 「間借りしている」 という場所でしょうか。

しかし今回、2017年のリーフでは、10年前に 「総合学術博物館紹介コーナー」 となっていた場所は 「さまざまな学術資料標本」 となっています。
思うに、10年前は自然史標本館と総合学術博物館は明確に区別されて別途建設計画もあったようですが、2017年現在はその境界が曖昧になっているような気がします。
それでも良いのではないでしょうか。世の中、博物館も含めていろいろなところで理系、文系に分けようとすることが多いですが、知的好奇心を満たす場所に理系、文系の区別を無理につける必要は本来ないと思っています。どちらも互いに手を取り合って発展していってほしいものですね。
さて、いよいよ理学部自然史標本館の展示の中で気に入ったものを紹介したいと思います。

ステゴサウルス・ステノプス Stegosaurus stenops
展示室に入るとすぐ出迎えてくれます。背中の板状の列がとても有名な恐竜です。時代はジュラ紀後期(約1億5000万年前)、産地はアメリカのユタ州。

ステゴサウルスの展示から離れたところですが、展示室の一角にあったホワイトボードに、こんなミニ知識が書いてありました。
Stegosaurus という属名はラテン語で「屋根トカゲ」という意味で、小さい頃から何で屋根なんだろう? と思っていましたが、昔は背中の板が亀の甲羅のように背中を覆う形で復元されていたのだそうです。なるほど、それが屋根みたいだからなんですね。

フクイラプトル・キタダニエンシス Fukuiraptor kitadaniensis
2013年7月に新しく展示されたそうです。白亜紀前期に生息していた、アロサウルス上科に属する肉食恐竜。恐竜化石の産出で有名な福井県勝山市北谷で発掘され(種小名のkitadaniensis はその発掘地にちなむようですね)、日本で初めて学名の付いた恐竜として有名。大腿骨の長さから、全長は約4.2メートルと推定されるそうです。

アノマロカリス・カナデンシス Anomalocaris canadensis
5億年以上前のバージェス動物群の代表的動物。この実物化石が見られるのは珍しいのではないでしょうか。全体像が不明の頃、こうした化石はエビの仲間の腹部と思われ、「anomalo(奇妙な)+ caris (エビ)」と名付けられたそうですが……

全身復元模型。「奇妙なエビ」の正体は頭部の触手部分でした。

ニッポニテス・ミラビリス Nipponites mirabilis
日本を代表する異常巻きアンモナイト。
かつては種としての末期的な症状である奇形といった見方をされていましたが、現在では規則性を持った巻き方であり、様々な環境に適応した進化の一例とされているのは有名ですね。しかしそうなら、現代の生物にどうしてこうした巻き方がないんでしょうね?

プラビトセラス・シグモイダーレ Pravitoceras sigmoidale
S字状に巻いた殻をもち、日本で産出する異常巻きアンモナイトの中でも、とくに変わった巻き方するもののひとつ。淡路島でポピュラーな化石だそうです。

放散虫の巨大な模型。実物は顕微鏡でないと観察できないような微細な原生生物です。

津波堆積物はぎ取り標本。地上から4.5メートルまでの地層を示したものです。通常堆積しているものと異なる特徴がある(例えば耕作土の間に、通常は堆積しない砂層がある)と、そこで津波があったと推察されるようです。いちばん左の地表近くは2011年の東日本大震災の時の津波跡、いちばん右の下、もっとも古い地層は約6000年前と書いてありました。数えると、この6000年の間に12回の津波の痕跡があったようです。

天井から吊るされたイワシクジラの骨格標本。1915年に宮城県鮎川町(現:石巻市)で陸揚げされたもので、骨格の全長は14メートルもあるそうです。左下方にフクイラプトルやステゴサウルスの背中が見えていますが、現生生物にも大きなものがいることを改めて実感します。

冬虫夏草標本。虫の体からうにょうにょと生えている子実体が、奇妙というか不思議というか不気味というか……。山形県の研究者、矢萩信夫氏によって採集された標本だそうです。

かの小惑星探査機はやぶさの1/10模型も展示されていました。
一通り見て感じたのは、各時代ごとの古生物の化石が充実していることでした。様々なバリエーションを持つ三葉虫やアンモナイトの化石は見ていて飽きません。小さめの博物館ですが、見所が多く充分楽しめました。

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